「1億円の壁」問題

配当金生活
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金融所得課税が再燃

 自民党の総裁選において、「1億円の壁問題」が話題になっていますが、そもそも「1億円の壁」とは何の事ですか?

 これは、岸田首相が以前、金融市場の反発を受けて棚上げした経緯があり、投資家は胸をなで下ろしたんだけれど、自民党総裁選で、再び議論されるようになりました。
 「1億円の壁」とは、日本の税制において、所得が年1億円を超えると所得税の実効税率が低下する現象を言います。
 高額所得者の多くは、株式の譲渡益や配当などの金融所得を多く持つ事から、これらの所得に対する税率(20%)が、総合課税の所得税率よりも低いために起こります。
 こうした問題を解消するため、金融所得の税率を上げようと言うものですが、金融所得税率を一律に引き上げた場合、富裕層よりもむしろ中間層が負担する税額が重くなる事から、この問題は、棚上げされた経緯があるのです。

 と言う事は、自民党総裁選に立候補している人達は、この問題にあまり触れたくないと思うのですが。

 その通りですが、地方党員に人気があるI氏が、「いかに公正な税制を実現するかが大事」と金融所得に対する税率の引き上げを訴えた事から、この問題が再燃したのです。

 では、残りの候補者は、この問題には消極的だという事ですか?

 表向きはその通りで、I氏に賛同するコメントはなく、若者に人気があるK氏が「貯蓄から投資への流れに水を差すタイミングではない」と反対していますが、残りの人は「状況をよく見定めた上で、何をする必要があるのか検討すべきだ」とお茶を濁しています。
 もちろんI氏も「新NISAのような投資を阻害する事は毛頭考えていない」と言っています。

 給与にかかる所得税は、所得が多いほど税率が上がる累進課税であり、所得195万円未満は5%、195万円~330万円未満は10%で、4,000万円以上は45%となっています。
 しかし、株式や投資信託で得た金融所得への課税は一律20%である事から、経済同友会の代表幹事は、「25%でも良い。議論すべきだ。」と発言しています。

 では、I氏以外の新政権が誕生すれば、金融所得に対する増税の可能性はあるんですね。

 中間層の投資への影響や、市場に対する影響も大きいし、何より新NISAが始まったばかりなので、新政権になっても、すぐには実現しないと思います。
 しかし、一部の野党は、この問題を「税負担の不公平を早急に正せ」とか「低所得層より軽い負担率だ」などと言って政権批判を強めた経緯がある事から、新政権もまったく触れない訳にはいかないと思います。