投資に複利効果はありません

後輩から「積立NISAの複利効果」の質問がありました。 思ったほど資産が増えていないみたいですが、そもそも投資に複利効果なんてありません。

えっ! 新NISAが始まる時、政府は「複利効果で資産を増やそう」って言ってましたよね。積立NISAはそれが売りでは無いんですか?

まず、NISAの積立投資を含め、投資信託は、複利で増えていく商品ではありません。複利で増えるのは預貯金であり、複利は、その利息の取り扱い方法です。

しかし、NISAの解説や投資信託の説明には、間違いなく「複利効果」と書いてますよ。

金融庁も含め、確かに投資信託のシミュレーションの多くが、下図のようなイラストで、まるで雪だるま方式で増えるかのように説明しています。

金融庁資産形成の基本:NISA特設ウェブサイト より

なぜ投資信託に複利はないのですか?

金融庁も含め、色々なサイトで複利の効果について、「1年目に出た利息を放っておかずに、元本に加えて2年目以降も運用すると、雪だるま式に増えますよ。しかも長期になればなるほど、大きな差になりますよ。」と説明しています。
先程も言いましたが、これは預貯金における利息の扱いであり、投資とは違います。
「複利」の計算で重要なのは、「利息が固定」している事と、「その利息が毎年、ずっと受け取れる」と言う事です。

投資信託は株の集合体です。ですから、価格は絶えず変動しています。仮にこの数年の成績が良かても、この先も良いとは限りませんし、ひょっとすると暴落し、資産が大幅に減少する事だって普通にあります。
ですから、資産は「○%確実に増加します」なんて事は言えないのです。 まして複利効果がどうのこうのと言うのは、全く訳が分かりません。

投資信託で、分配金を再投資するのは複利ではないのですか?

商品によっては、分配金を「受け取る」「再投資する」を選択できるものがあります。しかし、これを預金の「単利」「複利」と混同する人が、残念ながらベテラン投資家でもいるのです。
投資信託は、分配金を出すと、分配金の分だけ「本体」の分が減っています。「再投資する」と言うのは、「出した分配金を自動で戻す」事であり、「複利」とは全く違うのです。
そもそもファンドによっては、分配金を出さない所もあります。投資の世界において、「複利の話」は、全く当てはまらないんです。