人生100年時代、シニアの格差は拡大する
①お金を貯めようとする高齢者
昭和世代の高齢者にとって、資産形成のメインは貯金でした。1960年初頭、郵便貯金の定期金利(1年満期)は5%あり、その後は上昇し続け、1974年(昭和49年)には、最高となる7.5%をつけました。つまり、「金融機関にお金を預けさえすれば、安全にお金は増える」と言う良き時代であり、貯金が資産形成の大きな手段でした。しかし残念な事に、高齢者の中にはゼロ金利に近い現代においても、貯金が資産形成の唯一の手段であると信じ、わずかな年金を質素倹約に努め、余ったお金を貯金する人が多くいます。
②お金を増やそうとするシニア投資家
内閣府の報道によれば、年代別金融資産残高の保有割合は、この20年で60歳以上の割合は倍増し、全個人金融資産の約6割は60歳以上となっています。また、60歳以上の投資信託をしている5千人を対象とした貯蓄額の調査によると、2000万から5000万の保有が10.6%、5000万から1億が2.9%、1億以上は0.8%、わからない・答えたくないが36.5%との結果であり、お金を増やそうとしているシニア投資家は増加しています。
③増加する貧困層
厚労省による貧困層は、単身者世帯の年収が124万、2人世帯で175万、3人世帯で215 万、4人世帯で248万とされています。しかし高齢者世帯の所得は、150万から200万が最も割合が多く、年収150万以下の世帯は、23.5%(令和2年調査)もあります。また、二人以上の高齢者世帯で、貯蓄残高が300万未満は15.4%との事です。日本の高齢者世帯の貧困率は年々上昇しており、深刻な状況となっています。
④K字経済
富裕層と貧困層の二極化が進む状態を、K字経済と言います。右肩上がりの富裕層と右肩下がりの貧困層をグラフ化すれば、Kの字に似ている事から、コロナ禍が長期化してきた2021年頃から語られるようになりました。コロナ禍による雇用関係の悪化等により収入が減少した人と、反対にコロナ禍に伴う株の恩恵を受けた投資家が存在します。事実、2021年の3月を決算月とする上場企業で、75%が業績を上方修正し、25%が下方修正したとの事であり、コロナ禍の影響は、企業の業績にも影響したと言われています。
⑤シニア投資家の資産運用
「資産ゼロで死ぬ」なんて事を言う評論家がいますが、そもそも投資の本質は、自分の資産を増やす事だけにするのではありません。証券市場を通じて企業の活動資金となり、その結果、より質の高い商品やサービスが提供されるなど、社会の形成に不可欠なものであると言えます。シニア投資家は、残された人生を楽しみながら生活をする為に投資をするのであり、特別、贅沢をする為ではありません。人生100年時代、シニア投資家の活動によって、日本経済が少しでも良くなればと思います。