投資家はチャイナリスクを考えておく必要はあるのか
①チャイナリスク
「チャイナリスク」という言葉は、日本の証券業界用語になっていると言えます。各証券会社により若干の違いはありますが、簡単に言うと「企業が共産主義体制の中国で事業を展開する時に考えられる制約」で、特にアメリカ寄りの日本の企業にとっては、過去の歴史問題と合わせて無視する事は出来ないと言われています。実は、日本のIT企業の上海支店で勤務していた管理人の子供から、中国経済等の実情を聞いており、チャイナリスクの影響を考えるようになっています。
②中国経済の悪化
チャイナリスクとして最初に上げられるのが、中国経済の悪化です。現時点での中国経済は、雇用の悪化に伴う若年層の失業率の上昇、消費マインドの低下に伴う景気の減速、恒大集団や碧桂園の経営悪化に伴う不動産バブルの崩壊など、非常に厳しい状況にあると言えます。中国経済が減速した場合、日本はどの分野に影響が出るのでしょうか。JETROのデータによると、2022年の中国に対する輸出額は、1,848億3千万ドルです。中国向け輸出品の上位は、集積回路(27.2%)、半導体デバイス(2.4%)、コンデンサー(2.2%)、集積回路(1.4%)等の半導体関連です。中国経済が減速した場合、半導体業界の輸出が減少すると言われています。
③経済制裁の影響
チャイナリスクの二つめは、アメリカの経済制裁に伴うリスクです。半導体業界にとって、中国経済の悪化以上に厳しいのは、アメリカの半導体関連の輸出規制です。アメリカは、多国間で継続して規制を実施する必要があるとし、同盟国政府に足並みを揃えるよう求めています。世界の半導体製造装置市場は、首位がアメリカのアプライドマテリアルズ、2位がオランダのASML、3位が日本の東京エレクトロンです。東京エレクトロンの中国への売上比率は約25%と高く、米中対立の煽りを受ける可能性が高いと言われています。
④軍事衝突リスク
チャイナリスクの三つめは、台湾や尖閣諸島などの軍事衝突リスクです。特に日本にとって影響があるのは尖閣諸島問題に伴う反日デモです。反日デモは暴徒化し、これまでもトヨタ、ホンダ等の自動車メーカーやファーストリテイリング、イオン等の小売り事業、パナソニックやミツミ電機などの工場閉鎖などにより、株価が下落しました。しかし、中国に進出している企業の大半は、中国重視の姿勢は崩していません。
⑤チャイナリスクと日本株への影響
各証券会社は、チャイナリスクに言及はしますが、その多くは、中国経済の減速は、中国国内の問題であり、世界経済への影響は限定的だと結論づけています。また、中国経済の減速により、中国株に投資している海外投資家が、日本株へ移行していると言う評論家までいます。本当にそうでしょうか?管理人には分かりませんが、少なくとも正常性バイアスにより、個人投資家としての判断を誤らないようにだけはしたいと思っています。